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東京高等裁判所 昭和51年(行コ)90号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一控訴人は、本訴において、被控訴人(特許庁長官)に対し、本件通知を行政処分であるとして、その取消を求め、これに対し、被控訴人は、特訴庁長官には当事者(被告)適格はなく、かつ、本件通知は取消訴訟の対象となる行政処分ではないから、本訴は不適法であるとして争う。

ところで、当事者(被告)適格は、本件についていえば、本件通知の取消請求にかかる権利又は法律関係との関係で考察される資格であり、また、行政庁として少なくとも外部的にその意思を決定し表示する権限を有する者が、その資格を有すべきものであつて、その場合、本件通知がそのような外部的な意思の決定表示に当たるものであるか否かが問題になるから、本件通知の性質、すなわち、行政処分性について考察する。

<証拠>によれば、本件通知は特許庁審査官岡崎謙琇がしたものであることが認められるところ、本件通知が控訴人(原告)に対する昭和四九年三月一三日付「通知書」と題する書面をもつて、本件出願の考案は分割後のもとの出願、すなわち、原出願の考案と実質的に同一のものであつて、出願日の遡及は認められないので、本件出願は、昭和四五年法律第九一号により改正された実用新案法に基づく出願として取扱う旨を内容とするものであることは、当事者間に争いがない。

ところで、本件出願について、同出願が実用新案法第九条第一項、特許法第四四条第一項(右改正前のもの)の規定による分割出願として、出願日の遡及が認められるかどうかは、本件出願が同条の要件を充足するかどうかによつて客観的に定まるものであり、審査官のする通知によつてその遡及の効果が発生するものではない。また、本件出願について、右改正後の実用新案法を適用すべきものであるかどうかも、改正法附則第二条の規定により客観的に定まるものであつて、本件通知によりその効果が左右されるものではない。したがつて、本件出願につき、出願日の遡及が認められず、その結果、改正後の実用新案法が適用されるのは、いずれも、法律の規定により直接生じた結果であつて、本件通知によるものではない。そして、行政事件訴訟法第三条第二項の規定にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、それが、国民の具体的権利義務に直接の変動を及ぼすものでなければならないところ、本件通知は、前説示から明らかなとおり、法律上当然に生じた結果を単に通知するものに過ぎず、よし、本件出願が、昭和四五年法律第九一号により改正された実用新案法に基づく出願として取扱われることにより、右改正前の実用新案法に基づく出願に比し、控訴人にその主張のような不利益を生ずることがあるとしても、その不利益は、本件通知によつて生じたものではなく、したがつて、本件通知は、控訴人の法律的地位に何らの変動をも及ぼすものではないから、同条項の規定する取消を求めうる行政処分ということはできない。

二控訴人は、特許法第二九条の抽象的規定に対し拒絶査定という具体的処分があるのと同様に、改正法附則第二条の抽象的規定に対し本件通知という具体的処分があると主張する。しかしながら、特許法第二九条の規定は、当該発明が特許されるべきか否か、無効であるか否か等を判断決定するに当たつての規範の一として、専ら査定、審決等の処分の場において機能するのに対し、当該発明又は考案にかかる特許出願又は実用新案登録出願について、改正法附則第二条の規定により、なお従前の例によることとなるか否かが単に問題になるに過ぎない場合にあつては、それを決定するために、処分を必要としないことを考慮すれば、改正法附則第二条の規定と本件通知との関係が特許法第二九条と拒絶査定との関係に同じということはできず、控訴人の右主張は理由がない。

控訴人は、改正前の実用新案法においては、分割出願が分割要件を具備しない旨の審査官の判断は、拒絶理由の通知によつて出願人に知らされ、出願人は拒絶理由の通知に続く拒絶査定に対して審判を請求することができるから、出願人の利益保護に欠けるところがないわけであるが、改正前の実用新案法施行時の出願に基づく、改正後の実用新案法施行時の分割出願についても、出願人にこれと同一の法的保護を与えうるようにするためには、分割要件を具備しない旨の本件通知に対しても処分として取消のみちを認めるべきであると主張する。しかしながら、本件通知が法律の規定に基づかない、出願人の利益を図るためにされた全く行政上の措置であることは被控訴人主張のとおりであると解されるし、控訴人主張のような事情があるからといつて、右のような行政上の措置に対してまで、あえて取消のみちを肯認することはできない。控訴人の右主張も理由がない。

(荒木秀一 石井敬二郎 橋本攻)

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